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“Endbreak,Daybreak”

PBWプレイヤー様向けキャラクターブログです、お手数ですが先頭の記事の注意書きをご一読の上お楽しみ下さい。

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「それっておかしくない?」

ある晴れた、昼下がり、銀誓館学園のだだっ広いキャンパスを駆け抜けて。
柊先輩が、私の教室までわざわざ来てくれたことがあった。

「さとる、すまん。今日はちと用事があってな、
 部室に行けんので代わりに会いに来た。許してくれな」

そう言って、衆人環視の元、私の頭をくしゃっと撫でて
また踵を返しては走り去って行った、というのが事の一部始終である。

――その直後。

「栢沼さん、今の人、もしかして彼氏だったりするのー!?」
「すごくなーい!? 超カッコいいじゃん!」

囲まれた。ちなみに、彼女達は私達が能力者だということを知らない
本当の意味での「一般人」だ。恋愛沙汰にも興味津々のお年頃なのだろう。
昔の私ならば無視したところだろうが、さすがに処世術も身につけた。
しかしながら頭を撫ぜてもらえた嬉しさも相まったのだろうか、
つい「うん、まあ、そう」と浮かれた返事をしてしまった。

上がる黄色い声。良かったねー、などという声も聞こえるが、どういうことか。

学園の制服を着ていない限り、私服ではどう見ても男子にしか見えない私に
誰がどう見ても文句無しの美形の彼氏が居る。
彼女達にしてみれば、十分過ぎる程美味しいネタに違いないだろう。
その後も延々と根掘り葉掘り出会いから今までについて聞かれたが、
まさか『能力者として背中を追いかけているうちに好きになりました』
などと言える訳もなく、「学校行事で知り合った」と、適当にでっちあげて
(間違ったことは言っていない)のらりくらりとどうにかかわしていった。

いい加減辟易してきたところで、飛んできたひとつの質問があった。
「それでそれで、もう彼氏さんの部屋には遊びに行ったの?」
ああ、やっと無難な質問が来た――え?
そういえば柊先輩の住処は雑居ビルの地下で、関係者以外立ち入り禁止。
当然自分も関係者になるのだろうと思っていたが、そこの所はどうなのだろう。

「……ううん、ちょっと特殊な所で、出入り出来ないかも知れなくて――」
「ええー!? それちょっとおかしくない!?」
「そうだよ、彼氏が彼女を自分の部屋に入れないとか絶対おかしいって!」
「もし入れてもらえないんだとしたら、それ絶対何か疾しいことがあるんだよ」
「…………」

一気に畳み掛けられた。これには黙るしかない。
言われてみれば確かにおかしいことなのかも知れない。

ちなみに私が居を置いている結社“戦”の地下寮に
柊先輩も訪問出来る、ということに気付いたのはつい最近のことだ。
団長に「あれー、さとるさんの結社とうちは友好締結してるじゃないですかー。
で、彼氏さんがさとるさんの結社の団員なら、余裕で歓迎しますよー?」と。
言われるまで気付かなかった私も私だが、今はそれは置いておこう。

「ま、まあ、それは、聞いてみるね。……それじゃ、ごめん、私行くから」

それだけ言って強引に話を切り上げ、プレハブ棟の部室へ向かうべく立ち上がる。
クラスメイトの女子達はまだわいのわいのと盛り上がっているが、
私の心の中には、徐々に暗雲が垂れ込み始めていた。

『んー、何だ、その、ちょっと色々あってな、少し難しいかも知れん』

先日、柊先輩の住処に遊びに行っても良いかとメールを送った際の返信。
色々って何? 私にも言えないようなことなの? 難しいって?

先程の、クラスメイトの女子達の言葉が甦る。
『彼氏が彼女を自分の部屋に入れないとか絶対おかしいって!』
『それ絶対何か疾しいことがあるんだよ』

かつかつとわざとらしく靴音を鳴らしながら、プレハブ棟へ向かう。
柊先輩には、今日は会えない。その旨を携帯に頼らず
わざわざ直接言いに来てくれたのは心底嬉しかった。
が、今では逆にそれさえ怪しく思えてきてしまってならない。
疑心暗鬼、とは恐ろしいもので、一度生じるとどんどん膨らんで止まらない。

そういえば、最近はめっきり会える時間が減った。
それでも、何とか時間を作って会いに来てくれていることは知っている。
私が気恥ずかしくて言えずにいる間にも、『うちのハニーが云々』と
私のことを自慢げに周囲に話してくれているということも知っている。
しかしながら、そもそも――『何をやっているのか?』
自分が片手間に扱われているような感覚が追加される。こうなるともう泥沼だ。

私は携帯を取りだして、メールを打とうとして――止めた。
冷静になった訳ではない、直接聞こう、そう思っただけだ。
四六時中一緒に居てくれとは言わない、だが、口だけの愛情表現は
今の私にとってはもはや信用ならない。
――そう、飼っているペットが可愛いんだと吹聴しているに過ぎないのと同じだ。

そうだ、元々は孤高の人だから、私のことを重荷に感じているのかも知れない。
それで、遠まわしに「忙しい」と言っているのではないか。

かつかつ、かつかつかつ。

靴音のペースが速まる。やっぱり今日は真っ直ぐ帰ろう。
それで、寮で暖かい紅茶を淹れてもらおう。

先輩のことは、今は――忘れよう。
今度相対した時に、問うてみるだけのこと。

---------------------------

「Do you love me?」の根本的な切欠になったエピソード。
思春期の女子というものは本当に厄介です、
ある種厨二病の方がまだ扱いやすいと思います(笑)。

次には無事に仲直りしたふたりをお見せ出来ればと
親心的にも願う次第です。

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男性
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魔想紋章士/エンドブレイカー
趣味:
読書
自己紹介:
作成順は二番目であるにも関わらず、一番手のユリシーズを色々差し置いて多分一番人目に触れることが多いPCなのではないでしょうか。現在背後レベルで活動にムラがありますが、遂にランスブルグ編が来たので本気を出しています。

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